2020年5月4日月曜日

WANを理解する方法:WANの伝送媒体・物理層・データリンク層って実際どうなっている?

ITの世界でWANは最重要なインフラですが、LANのように身近に存在しないため、イメージしずらいのが実状だと思います。

また、LANについてはネットでも多種多様な情報が載っているため、勉強しようと思えばいくらでもできますが、WANについては情報が少ないため、勉強したくてもできません。

そこで、今回はWANについて知りえることを記載します。

LANについてはネットで検索すればいくらでも情報が入手できるため、今回は省きます。

1. WANとは
WANとは、wide area networkの略でワンと読みます。
みなさんご存じのようにLANがユーザが自由に敷設・運営できるネットワークであるのに対し、WANは通信事業者が敷設・運営するネットワークや回線を使ってユーザに提供するサービスのことです。

例えば、自宅でインターネットを使うためにブロードバンドルータを設置していると思います。そして自宅にあるPCは有線LANか無線LANでブロードバンドルータに接続してインターネットに接続しています。

有線LAN・・・PCとブロードバンドルータをLANケーブルでつなぐ
無線LAN・・・PCとブロードバンドルータを無線LANでつなぐ

この場合、PC、ブロードバンドルータ、LANケーブル、無線LANで構成されるネットワークがLANということになります。

そして、ブロードバンドルータから先の部分がWANということになります。
ただし、インターネット上にもユーザが敷設・運営しているネットワークが存在しますので、その部分はLANということになります。
(自宅でブロードバンドルータに公開サーバをLAN接続している場合等)

また、企業のネットワークでもWANが使われています。
東京本社と大阪支社からなる企業があるとして、東京本社および大阪支社内の各ネットワークは通常LANで構成されますが、距離が離れているため、東京本社と大阪支社を結ぶネットワークはLANでは構成できません。この場合、通信事業者からWANを借りて両者のLANを接続することになります。

通信事業者は全国各地にWANを敷設していますが、WANの実態としてはほとんどが光ファイバー(メタルケーブルもあります)で構成されています。

2. WANの種類
WANにはアクセス回線と中継網の役割があります。それぞれ、いろいろな種類のWANが使われています。

[アクセス回線として使われるWAN]
①ADSL
②FTTH
③電話回線(アクセス回線)
④専用線

[中継網として使われるWAN]
①電話回線(中継網)
②専用線
③ATM
④フレームリレー
⑤IP-VPN
⑥広域イーサネット

3. 各WAN(アクセス回線として使われるWAN)の詳細
ADSL:
・自宅から電話局までの間を、電話線を使って高速データ通信を提供するサービス
・電話よりも高い周波数帯域を幅広く使ってデータを伝送
伝送媒体・・・電話線(メタルケーブル)
物理層・・・ADSL
データリンク層・・・ATMセル+MAC+PPPoE+PPP+IPパケット(PPPoE方式)
                             ATMセル+PPP+IPパケット(PPPoA方式)
                             MAC+PPP+IPパケット(DHCP方式)

FTTH:
・通信事業者と自宅を光ファイバーで結び高速データ通信を提供するサービス
伝送媒体・・・光ファイバー
物理層・・・GE-PON
データリンク層・・・MAC+PPPoE+PPP+IPパケット

電話回線(アクセス回線):
・自宅から電話局までの間を、電話線を使ってデータ通信を提供するサービス
・電話で使う周波数帯域を使ってデータを伝送
伝送媒体・・・電話線(メタルケーブル)
物理層・・・電話回線
データリンク層・・・HDLC+PPP+IPパケット

専用線:
・帯域保証型で2つの拠点間をつなぐサービス
伝送媒体・・・光ファイバー
物理層・・・SONET/SDH
データリンク層・・・MAC+IPパケット

4. 各WAN(中継網として使われるWAN)の詳細
電話回線(中継網):
・電話網を使ってデータ通信を提供するサービス
伝送媒体・・・光ファイバー
物理層・・・SONET/SDH
データリンク層・・・

専用線:
・帯域保証型で2つの拠点間をつなぐサービス
伝送媒体・・・光ファイバー
物理層・・・SONET/SDH
データリンク層・・・

ATM:
・データを細切れにして1回線を複数ユーザで共用する1対多の通信が可能なサービス
・固定長セルによる帯域保証
伝送媒体・・・光ファイバー
物理層・・・SONET/SDH
データリンク層・・・ATMセル

フレームリレー:
・データを細切れにして1回線を複数ユーザで共用する1対多の通信が可能なサービス
・X.25を簡略化して高速化を図った技術(しっかりした帯域保証なし)
伝送媒体・・・光ファイバー
物理層・・・SONET/SDH
データリンク層・・・フレームリレー

IP-VPN:
・中継網を複数ユーザで共用するサービス
・MPLSラベルでユーザを識別
伝送媒体・・・光ファイバー
物理層・・・SONET/SDH
データリンク層・・・入口と出口は主にMAC(網内は何でもあり)

広域イーサネット:
・中継網を複数ユーザで共用するサービス
・VLANタグでユーザを識別
伝送媒体・・・光ファイバー
物理層・・・SONET/SDH、イーサネット
データリンク層・・・入口と出口はMAC(網内は何でもあり)

かつて、キャリアなどが持つバックボーンの主要インフラはSONET/SDHでした。

SONET/SDHは、電話網向けに開発された技術ということもあり、コネクションごとに帯域を占有するという、コネクション型のメカニズムで動作しており、インターネットのように変動の大きいトラフィックの中継という用途では、帯域を有効に活用できないという難点がありました。

そこで注目が集まったのがATMです。

ATMでは、固定長セルという単位に分割し、オーバー・ヘッドの少ない高速な伝送を行えることが特徴で、トラフィックが少ないときでも帯域を有効に活用でき、逆にトラフィックが増えた場合でも統計多重化による優先制御が行えます。

ただ、ATMの進化を超える伝送路の高速化の要求や、10GbEなどのように安価で高速な技術が登場してきたこともあり、ATMに対する需要は弱まっていきました。
(IPパケットをセル単位に分割して再構成するオーバー・ヘッドに対して、高速化されたSONET/SDHでそのままフレームとして送出したほうが効率がいい、と考えられるようになったことも大きい)

5. プロバイダやデータセンタのネットワーク
プロバイダやデータセンタ事業者は東京と大阪といった異なる地区をつなぐ大規模なバックボーンを構築しています。

通常、近距離となる地区内のバックボーンやプロバイダとデータセンタ事業者間の接続は、10GbE等のイーサネットで直接接続したり、ダークファイバとWDM装置の組合せ(各MACフレームを波長の異なる光信号に変換し多重化してダークファイバにデータを流す)で接続します。

これに対し、遠距離となる地区間のバックボーンは、ダークファイバが提供されていないため、専用線で接続してSONET/SDHでデータをやりとりします。

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